2024年4月30日
親が持つ土地に二世帯住宅を建てる場合、考えなければならないのは「建物を誰の名義にするか」という問題です。
融資を受けやすい、固定資産税の減額を2戸分適用できる、という理由で、ハウスメーカーから区分登記を勧められた人もいるでしょう。
区分登記とは?
二世帯住宅を2戸の住宅とみなし、親子がそれぞれの名義で登記する方法のこと。下記の条件を満たす必要があります。
しかし、将来発生する相続税のことを考えると、必ずしも区分登記がお得とは言えません。
「居住用宅地に対する小規模宅地等の特例」というものをご存知でしょうか?
「居住用宅地に対する小規模宅地等の特例」とは、相続税に対する軽減措置のことで、相続税評価額が80%減額されるというものです。
この特例を受けるためには細かい条件がありますが、前提となるのは相続する人の配偶者、または同居親族のみ、適用を受けることができるという点です。
>相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)…国税庁
平成26年の相続税の改正で、この居住用宅地の限度面積が330㎡まで引き上げられ、完全分離型の二世帯住宅についてもこの特例が認められるようになりました。
しかし、区分登記を行なっている場合、問題があります。この特例を受けられるのは、「登記上の親世帯の敷地部分のみ」となってしまうのです。
区分登記をしていた場合に相続税の計算がどのようになるか、例を挙げてみましょう。
条件
父親が亡くなって相続税が発生する場合、母親と長男が1/2ずつ相続します。
区分登記をしていた場合、たとえ同じ建物に住んでいても、長男は特例の定める「同居する親族」とは認められません。
では、同じ二世帯住宅でも、建物が父親名義の場合(=区分登記していない場合)はどうなるでしょう?
長男も、「同居する親族」と認められるため、敷地全体が特例の対象となります。その差は歴然です。
このように、親名義の土地に二世帯住宅を建てる場合、建物の名義は共有名義または親単独の名義にしておくと相続税が安くなります。もしも建築資金が足りないという場合には、借入金を使ってでも親名義のほうがいいでしょう。
以上の例では、相続する人がひとりの場合について考えてきました。しかし実際には、相続税は資産を相続する人が多いほど「誰が、いくらを税金を支払うのか」の計算が複雑になります。
税理士やハウスメーカーに十分相談してみるとよいでしょう。